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口腔アレルギー症候群

2013年3月

新鮮な果物、野菜を食べた直後にくちびるの腫れや、口の中・喉のイガイガ感を感じたことがありませんか?それは口腔アレルギー症候群かもしれません。

口腔アレルギー症候群は、新鮮な果物・野菜・ナッツ類を摂取した後に口の中やのどの粘膜のかゆみや腫れなどを起こす疾患で、シラカバを中心とした花粉症の患者さんに多くみられます。シラカバと果物や野菜、一見関係がないようですが、花粉のアレルゲン(アレルギーの原因物質)と果物や野菜の食物アレルゲンには共通した分子構造が存在し、その抗原分子によって引き起こされていると考えられています。そのため成人や年長児では、まずシラカバの花粉症を発症し、その後に口腔アレルギー症候群を発症することが多く、一方、年少児では原因となる食物をたくさん食べることでアレルギーになると考えられています。

症状は、原因食物の摂取後15分以内に、食物の触れたくちびる、口の中、喉の粘膜にかゆみやヒリヒリ・イガイガ感などが出現します。鼻づまり、鼻水などの鼻アレルギー、目の充血、涙が出るなどの眼アレルギーの症状が現れることもあり。他にも、じんましんをはじめ、腹痛、嘔吐、下痢などの消化器症状、のどの閉塞感、喘息などの症状や、重症の場合には、アナフィラキシーと呼ばれる血圧低下、意識消失などが出現し生命の危険に至ることもあります。

原因となる果物・野菜はモモ、リンゴ、ナシ、サクランボ、イチゴなどのバラ科の果物、メロン、スイカなどのウリ科の植物、キウイ、バナナ、トマト、ジャガイモなどさまざまです。ある果物や野菜にアレルギーを生ずると、同じ科の果物や野菜にアレルギーを生じやすくなるのはもちろんですが、アレルゲンに共通の構造を持つものあるため、科が異なっていても起きることがあります。例えば、シラカバの花粉と共通抗原をもつセロリ、パセリ、ニンジン、モモ、ナシ、ジャガイモなどでは、そのうちの1つにアレルギーを起こすと、他の果物・野菜でもアレルギーを起こす可能性があります。同じ現象は、サクランボ、リンゴ、ピーマンのグループ、モモ、リンゴ、ナシ、大豆のグループ、パパイヤ、パイナップル、大豆、イチジク、キウイのグループでもみられます。
シラカバ(カバノキ科)は北海道に多く、アレルギーをもつ人も増加しています。西日本では、同じくカバノキ科のオオヤシャブシの花粉症とリンゴなどの口腔アレルギー症候群に関連があると考えられています。関東地方では、シラカバと同じブナ目ブナ科(ブナ、クリ、シイノキなど)の花粉症患者さんに出現すると考えられています。また、花粉症といえば真っ先に思い浮かぶのはスギ花粉症ですが、スギ花粉症の患者さんでは、生のトマトで口腔アレルギー症候群を起こす方がいます。これは、スギ花粉とトマトには抗原の共通構造が認められているからです。

診断は、症状が見られる直前に食べた食物から原因を捜し出しますが、果物や野菜の抗原は加熱や加工により失活することがありますので、わかりにくいことも多く、注意が必要です。また、プリックテストと呼ばれるアレルギー検査や血液検査が有効なこともあります。

治療は、現在のところ原因食物を避けることが第一です。症状が出現しているにもかかわらず食べ続けると、重症化することがあるからです。特定の食物で口腔アレルギー症候群を発症すると、同じグループの食物にもアレルギーを起こす可能性はありますが、実際に症状の出現するもの以外は原則として制限する必要はありません。新鮮な果物や野菜で引き起こされている場合には加熱や加工により摂取が可能になることもあります。

口腔アレルギー症候群は、合併する花粉アレルギーを治療すると軽快することがありますので、花粉症の治療も大切です。もしも発症してしまったら、早めに原因を知ることも重症化を防ぐには有効ですから、おかしいなと感じたら、まずはかかりつけ医に相談することをお勧めします。

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