医療トピックス
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ご存知ですか? 妊婦さんに接種するRSウイルスワクチンRSウイルス感染症とは?
2025年7月
RSウイルス感染症は、RSウイルスに感染することによって起こる呼吸器の感染症です。
患者さんによりますが軽い風邪のような症状から重い肺炎の症状まで様々です。RSウイルス感染症は赤ちゃんの風邪の原因のひとつでもあり、ほぼすべてのお子さんが2歳までには感染するとされています。また幅広い年齢層で何度も感染するため、生まれたばかりの赤ちゃんから高齢者まで感染するといわれています。
小さなお子さん(新生児や乳幼児)が感染すると約7割は、発熱、鼻水などの上気道炎の症状の後、快方に向かいますが約3割のお子さんが細気管支炎や肺炎などの下気道炎を引き起こして強いせきや喘鳴、呼吸困難などの症状がみられ重症化することもあります。
特に初めてRSウイルスに感染した赤ちゃん、小さく生まれた赤ちゃん(早産児や低出生体重児)、心臓や肺の基礎疾患、免疫不全、ダウン症のあるお子さんは注意が必要です。
治療と予防対策
残念ながらRSウイルスに効果のある抗ウイルス薬はありません。症状をやわらげる対症療法や呼吸を助ける治療が行われます。予防としてはどの感染症でも同じですが、手洗いや手指消毒、換気、マスクの着用です。
赤ちゃんに直接抗体を投与しRSウイルスのはたらきをおさえる注射薬がありますが、保険で接種できるお子さんは早産児や特定の合併症のある赤ちゃんだけです。非常に高価な薬剤のため自費で接種することは現実的ではありません。
妊婦さんに接種するRSウイルスワクチン
そこでRSウイルスから出生直後の赤ちゃんを守るため、このワクチンが生まれてきました。このワクチンを妊婦さんに接種することでお母さんの体内で抗体が作られ、その抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行します。赤ちゃんは生後数ヵ月の間は免疫力が十分ではありませんが、一方で生まれて間もない赤ちゃんが感染症にかかりにくいのは、胎盤などを通じてお母さんから抗体の一部を受け取って生まれてくるためです。これを「母子免疫」といい、この効果をRSウイルスに対応したワクチンです。
妊娠24~36週の妊婦さんにワクチンを接種することで、重度のRSウイルスによる下気道感染症は生後90日以内で約8割、生後180日以内で約7割が予防されたと報告されています。妊娠28~36週に接種を行なった方が、より有効性がより高い傾向が認められています。
抗体が赤ちゃんに移行するのに約2週間かかると言われていますので、実際には万一の早産を考えて妊娠32週前後で接種することをお勧めします。
接種したことによる産科的な問題はないとされています。一つだけ注意点があります。成人用のRSウイルスワクチンは高齢者専用と高齢者及び妊婦用の2種類あるので、接種を受けるときに妊婦さんに使用できるワクチンであることを確認してください。
費用は30,000円から40,000円(自費診療)とやや高価ですが、生まれてくる赤ちゃんを守るためにも是非、接種することをお勧めします。
少子化対策のためにも早く無料もしくは少ない費用で接種できるように願っています。