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肝臓の「声」に耳を澄ませましょう

2025年5月

皆さんも「脂肪肝」という言葉は耳にしたことがあると思います。体内で処理できずに余ったエネルギーが脂肪として肝臓にたまった状態で、食べ過ぎや飲みすぎ、運動不足や肥満などと関連します。
しかし必ずしも太っていない方でも脂肪肝を認めることはあり、遺伝的に脂肪肝になりやすい体質の方がいることも分かっています。また、われわれ日本人は、欧米の人と比べてそんなに肥満度(BMI)が高くなくても脂肪肝になりやすいことが知られています。

肝臓に脂肪がたまると肝細胞が傷つき、そこで炎症が起こると「肝炎」となります。肝炎が持続して「慢性肝炎」の状態になると、最終的には肝臓が硬くなり機能不全となる「肝硬変」の状態まで進行してしまうことがあり、またそのような肝臓では「肝臓がん」を発生するリスクが増えると言われています。

これまでは「肝硬変」や「肝臓がん」の原因はB型肝炎、C型肝炎といったウイルス性肝炎によるものが多かったのですが、近年B型肝炎、C型肝炎ウイルスに対する新しい治療薬が開発されたことで、これらウイルス性肝炎による「肝硬変」や「肝臓がん」の発症は大きく減少しました。
その一方で、「脂肪肝」を原因とした「肝硬変」や「肝臓がん」は近年増加しており、注意が必要です。お酒をあまり飲まない人でも肥満、耐糖能異常(高血糖)、高血圧、高中性脂肪、低HDL血症などの代謝異常をもつ方の「脂肪肝」は、最近「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」という名称で呼ぶことが世界的に決められ注目されており、その治療や予防がますます重要とされています。

「脂肪肝」の早期発見と治療を目指して、日本肝臓学会は2023年に「奈良宣言2023」という声明を発表しました。その中で、一般的な肝機能検査として健康診断でも測定される「ALT」という値が30 U/Lを超えていた場合、肝臓の病気が隠れている可能性があるためかかりつけ医などを受診することを勧めています(https://www.jsh.or.jp/medical/nara_sengen/ippan.html)。

「脂肪肝」、特にMASLDの治療には食事療法、運動療法そして薬物療法がありますが、やはり最も重要なのは食事療法、運動療法による体重の減量です。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれますが、きちんと耳を澄ませばALT値というSOS信号を発しています。まずは健康診断を受診し、ALT値が30 U/Lを超えているようでしたら、かかりつけ医と相談してみましょう。

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