医療トピックス
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夜間に呼吸がとまる原因は?
2022年10月
夜中のいびきがうるさい、呼吸が止まっているなどで有名な病気に睡眠時無呼吸症候群があります。文字通り睡眠中に呼吸が止まってしまう病気であり、睡眠の質が低下することによる日中の眠気や将来的な心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患につながることがわかっています。さて患者数ですがなんと人口全体の5%が治療すべき対象であるとの報告もあります。これは本人が感じる症状が何もない無症状者も含めた全人口の5%なのでなかなかのものです。日本全体に未治療の人も含めて500万人規模の治療対象者がいると概算されます。
さて無呼吸になってしまう原因として有名なのは皆さんご存じでしょうが肥満です。物理的に首の周りに脂肪が多いために眠った時に首を絞めた状態になってしまうというわけです。このような状態を閉塞性無呼吸といって肥満以外にも扁桃腺腫大、短頸症、小顎症などでも誘発されます。要するに空気の通り道、気道が物理的に狭くなっているわけです。対して気道は狭くないにもかかわらず脳が呼吸自体を止めてしまうという中枢性無呼吸があります。脳梗塞後や心不全の患者さんなどで見られます。
ただ以前からこのような無呼吸に閉塞性でも中枢性でも説明がつかないというような病態が存在しました。2000年代初頭からそのような病態を説明するものとしてRostral fluid shiftという概念が提唱されました。口側への液体移動とでも訳すといいのでしょうか?これは夜間横になった時に日中重力で足側に溜まっていた体液が首側に移動するために気道圧迫が起こり無呼吸が起こるというものです。無呼吸が無い健康な人が夜間寝ているときに足全体を人工的に締め付けると首側に体液が移動し無呼吸が誘発されるという再現実験も行われ高い再現性を示しました。以前から閉塞性無呼吸と中枢性無呼吸の病態を行ったり来たりする患者さんが存在したのですがこれは第3の無呼吸の原因と呼ばれるようになったRostral fluid shiftによるものと言われました。中枢性無呼吸の方は心不全患者さんなどのため体液が多くRostral fluid shiftが起こりやすいというわけです。
夜間のいびきや呼吸停止は何が原因で起こっているのか考えてみることから睡眠時無呼吸の治療は始まります。