医療トピックス
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子供の頭痛
2022年9月
頭痛は思春期から始まる印象があるのではないでしょうか。意外なことに小学生の3~4%に片頭痛を、5~6%に緊張型頭痛を認めます。年少児は症状をうまく言葉で表現できないうえに、自家中毒に似た頭痛より嘔吐や腹痛などが目立つ症状の腹部片頭痛の場合もあるため、なかなか頭痛と気づかれないことがあります。頭痛を持つ子供たちは症状の辛さだけでなく頭痛によって授業や遊びが順調にいかない辛さを抱えています。頭痛によって日常生活に支障をきたした日が何日あるのかを具体的に把握し、本人の辛さを認め、共感することが重要です。成長とともに頭痛の頻度は増え、高校生の15%に片頭痛を、27%に緊張型頭痛を認めます。
片頭痛は拍動性の痛みで、身体を動かすと頭痛がひどくなります。吐き気や嘔吐、毛髪のピリピリした感じや手足のしびれを伴うこともあります。睡眠不足、眩しさ、スマホのなどのブルーライト、匂い、人混みなどで誘発されます。動けなくなるほど頭痛の程度は強いのですが、睡眠後すっかり治り、授業に戻ることもできます。大人と違って子供では両側に起こることも多いので緊張型頭痛と区別がつきにくいこともありますが、発作時に活動性が下がり、誘因を避ける行動がみられる時は片頭痛の可能性が高いと言えるでしょう。中高生になると女児の割合が増え、月経周期との関連も増えてきます。
緊張型頭痛は締め付けられるような痛みで、片頭痛より痛みは軽いものの持続時間は30分~7日間と長く、慢性化しやすい傾向にあります。同じ姿勢、運動不足、スマホの長時間使用などで肩や首が張り、頭痛を起こすと考えらえています。頭痛を訴えながらもゲームや運動ができるため軽く考えられがちですが、程度は軽くても慢性的に痛みがあるため日常生活に対する支障度が低いとは言えません。
年少児の頭痛は持続時間が短いため発作を起こさない対策が中心になります。適切な睡眠と食事をとり、日光・強すぎる照明・スマホ・ゲーム機などのブルーライト制限が望まれます。チョコレート、チーズ、ナッツ、香辛料などが頭痛の誘因とされていますが、個人差があるので一律に制限する必要はありません。ストレッチや入浴は、筋緊張をほぐすのによいでしょう。高学年になり頭痛の持続時間が長くなってくると、発作時の内服も併用します。頭痛日誌で状況を把握し、頭痛のおこりやすい気候や月経周期に合わせて予防薬や漢方薬を服用するのが有効な場合もあります。たとえ予防ができなくても、いつ頭痛が起こるか予測できることで、頭痛に対する漠然とした不安が軽減されます。
頭痛の頻度を減らし、発作時に効果的な症状軽減を得るには、保護者の方や学校関係者の協力が必要です。体育や野外活動の際の帽子やサングラスの許可、窓際の席や人混みを避けるなど発作予防の対策と、頭痛時に授業中でもすぐ薬が飲めて保健室で横になれる環境をお願いしましょう。
これらの対策や治療を続けてもなかなか治らない頭痛もあります。1日4時間以上の頭痛が月に15日以上ある状態が3か月以上続いた場合は、慢性連日性頭痛と言われます。慢性片頭痛、慢性緊張型頭痛、薬物乱用性頭痛に分類されますが、しばしば併発します。慢性緊張性頭痛には治療薬が効かないので、生活に支障をきたす頭痛の時だけ治療薬を使うようにするなど乱用を避けます。頭痛が治っても学校に行けない場合や朝起きられない場合は、頭痛の他に心理社会的な要因や起立性調節障害(*)の合併も考慮します。子供も保護者も不安を抱えていることが多いため担任・学校医と連携したサポート体制が必要です。過度に悲観的にならず「思春期は体と心の成長がアンバランスなもの」、「今の苦しい状況はいつか乗り越えられる」という気持ちで頭痛と付き合いながら生活していきましょう。
最後になりましたが、頭痛は副鼻腔炎、中耳炎、歯周炎、眼疾患が原因になることがありなす。また命に関わる髄膜炎、脳炎、脳腫瘍など危険な頭痛も潜んでいます。自己診断はせず、頭痛がたびたびあるようならまずはかかりつけ医にご相談ください。特に「突然、これまでで最悪の頭痛が生じ、どんどんひどくなる」時はすぐに医療機関を受診してください。
(*起立性調節障害については2022年1月のトピックスをご参照ください)