医療トピックス

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その痛み、どこから?

2022年6月

 一日の中で天候の変化が激しい昨今、気象の影響を受けて症状が悪化する慢性疾患の患者さんは多く、気象関連痛あるいは天気痛と呼ばれています。該当する病気として、片頭痛、緊張型頭痛、腰痛、関節痛、線維筋痛症などが良く知られています。長引く痛みは相当なストレスであり、色々な全身症状が現れてきます。そこで、最近、日本でも良く耳にするようになった、線維筋痛症という病気について、簡単にまとめてみたいと思います。
 「線維筋痛症」とは、3ケ月以上の長期にわたって、身体のいたるところに痛みが出て、強いこわばり(体が硬くなる)とともに、ひどい疲労感や不眠、頭痛やうつ気分など多彩な症状を伴い、残念ながら原因が良くわかっていません。現在のところ、完全に治す方法がありませんが、命にかかわる病気ではありません。しかし、日常生活への影響が大きく、社会生活が著しく困難となることが大きな問題です。
 欧米では、一般人口の約2%に、日本では約1.7%にみられ、関節リウマチが約0.7%であることと比べると決してまれな病気ではないことがわかります。
 男女比は1:4.8と女性に多く、発病年齢は40歳後半の年代に多いです。
 遺伝性はないとされていて、発病には、家庭環境(環境要因)が重要です。
 原因はわかっていませんが、痛みを起こす刺激がないのに、痛みの神経が興奮し、それが脳に伝わると、健康な人では、脳から痛み刺激を抑える反応が起こります。しかし、この病気では、なぜか、痛みの神経が興奮しっぱなしとなり、抑える反応も効かなくなってしまうのです。
 患者さん全員に共通して、身体中に慢性の痛みが続き、鈍い痛みや激しい痛みとなり仕事や家事ができず、眠れないこともしばしばあります。季節や天候、活動時間、精神的ストレスなどによって悪化し、痛み以外に、強い疲労感、抑うつ気分、目覚めがすっきりしない、物忘れなど様々な症状が出てきます。
 血液・尿検査、レントゲン検査などの画像検査をしても特徴的な結果はなく、異常が出たら、線維筋痛症と診断はできません。したがって、診断は、特徴的な圧痛点(図参照)がありますので、親指で指が白くなる程度に抑えてみて痛みがある箇所の数で診断します。

 治療は、激しい痛みを和らげることが主で、日常生活に影響がない程度にコントロールするために、薬物療法と非薬物療法があります。薬局などで購入できる一般的な鎮痛薬(ロキソニンやボルタレン)はあまり効果が無く、特殊な鎮痛薬や抗うつ薬・麻薬系の薬などを使用します。非薬物療法には、運動療法(ヨガ、太極拳など)と精神・心理療法(認知行動療法)があります。
 基本的に命に重大な結果を招くことはありませんが、難治性であることから長期にわたって経過し、日常生活動作能や生活の質が著しく低下し、機能的予後が問題となります。まだ、日本では認知度が低いため患者さんの耐え難い痛みなどの無理解、誤解で精神的苦痛が強い状況にあるため、患者支援団体が組織され活動を行っています。
 思いあたる症状があり不安な方は、是非かかりつけ医の先生へご相談してみてください。

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