医療トピックス
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何度以上が発熱?
2020年5月
病院を受診すると受付などで「発熱はありませんか」と尋ねられますが、「普段よりは高いけれども、37.5℃は超えていないし…」と答えに迷ってしまいそうなときがありませんか。
医学書の発熱に関する記載を調べてみると、原因不明熱の定義として「38.3°C(=101°F)以上の発熱が3週間以上続く場合…」とか、慢性疲労症候群の診断基準として「微熱(37.5°C~38.6°C)或いは悪寒があり…」とかの表現は見つかりました。しかし「~°C以上を発熱とみなす」という定義のようなものは見つかりません。
一方、日常的には37.5°C以上を発熱と考えることが多いと思います。
日本では感染症法の届け出基準に「発熱とは体温が37.5°C以上を呈した状態をいい、高熱とは体温が38.0°C以上を呈した状態をいう」と書かれていたり、インフルエンザワクチンなどの予診票に「明らかな発熱のある人(37.5°Cを超える人)は予防接種を受けられない」という注意書きがあったりします。法令的にはもちろんこの感染症法の記載が発熱基準の根拠になります。しかしこのような記載があるから普段から37.5°C以上を発熱ととらえているのか、逆に感覚的に37.5°C以上を発熱と感じる人が多いからこの記載につながったのかは分かりません。
それでは発熱に対して、平熱とは何でしょうか。日本人の平均体温に関して、多人数の健康な人を対象にして正確に測定(わきの下の然るべき位置で十分な時間をかけて測ることが重要です)した信頼できるものとして今回二つの報告を見つけました。一つは1957年に東京大学で3,000人以上を対象にして行われた平均36.89°Cという報告。もう一つは1993年に湘南短期大学で827人を対象として行われた平均36.67°Cというものです。いずれもやや古い報告ですがおおむね36°C台後半が平熱と考えて良いでしょう。また体温は気温などの外部環境や、測定される人の運動状況や、検温する時刻によっても異なってきます。通常およそ1°C弱の変動はあるそうです。とすると36℃後半を中心として前後1°C以内は平熱と考えて良いことになり、37.5°C辺りを発熱の目安と考えても問題はなさそうです。
しかし病院で発熱の有無を尋ねている場合は、単に温度を確認しているだけではありません。病的な体温の上昇があるかをお聞きしていますので、37.5°C以下でも具合が悪くて普段の体温より高い時には「熱があります」と答えて問題ありません。37.5°Cは目安です。