医療トピックス

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しゃがめない子どもたち

2018年2月

 日本整形外科学会は《運動器の10年》として2010年から2020年までを終生すこやかに身体を動かすことができ「生活・人生の質(QOL)」の保証される社会の実現を目指すための強化期間と位置づけています。
 そして、平成26 (2014)年4月30日に文部科学省が「学校保健安全法の一部改正」に基づいて「運動器等に関する検査を必須項目」に追加し、平成28年(2016)年4月1日より運動器検診が実施されています。すなわち、これまで整形外科疾患としては、脊柱側弯症や胸郭の検診項目が実施されていましたが、新たに上肢・下肢などの四肢や骨・関節の運動器障害についての検診項目が加わりました。
 実際に運動器検診を実施するのは、内科や小児科を専門とする学校医の先生で、日常診療では運動器の診察に慣れていない先生が多いのが実情です。そんな中で、現場の声として検診を担当した学校医や養護教諭から素朴な疑問として「検診の中で、しゃがめない子が多いのは何故か?しかも、運動部に所属して、毎日運動している生徒に多いのは何故でしょうか?運動不足で体が硬いのならわかるのに・・・」という声が聞こえてきます。
 今回は、その理由についてスポーツ医学的に考えてみたいと思います。

 写真1は「しゃがみ込みテスト」と言う、運動器検診の1つのチェック項目で基本的には下腿筋の柔軟性チェックのテストです。
 しゃがむと言う動作は、股関節、膝関節、足関節(足首)の最大に近い屈曲が必要となります。特に、足関節の可動域の柔軟性が低い場合は、このしゃがみ込みができず、踵が床から離れてしまうか、後ろに転がってしまいます。
 中学の検診に行くと、本当にこのテストの陽性者(足関節の柔軟性低下有り)の生徒が多いのです。様々な原因考えられますが、一つは中学生の時期がちょうど成長期のピークにあることです。この時期は、身長が最も伸びる時期です。身長は、骨端線という骨内にある成長軟骨が集まるいわゆる成長線を中心に骨が成長することで伸びます。骨の成長スピードは速く、ピーク時には年間10cm以上伸びる生徒も少なくありません。成長スピードに筋・腱・靭帯など骨に接続する組織の成長が追いつかず、これらの線維が引き伸ばされ過緊張となり柔軟性を失います。この状態で、部活動所属の生徒たちは激しく運動をするので、筋肉へのストレスは大きくなり、筋肉は柔軟性を更に失います。よって、身長の高い、運動部に所属する生徒というのが、体が最も硬くなり易い生徒ということになります。
 もう一つ、しゃがめない原因として考えられるのは、現在の生活様式の西洋化があげられます。昭和の時代までは、どの家にも畳の部屋が有り、また便器も和式トイレも多く、日常生活の中で、あぐらや、正座、しゃがみ込む動作が組み込まれ、自然とストレッチが行われ、足関節の柔軟性が維持されていた事が考えられます。現在は、和式トイレなど使ったことがない子も多く、椅子と机の西洋式の生活様式の家庭が大半で、必然的にしゃがみ込む動作は日常生活の中からは消えていき、股関節や足関節が硬くなっていることが考えられます。

 「しゃがめない状態を放置して良いのでしょうか?」これは、良くはありません。
この状態で、運動を続ければ、余分な負担が、筋・腱・靭帯・骨にかかり、スポーツ障害の原因となります。常日頃から、成長期には写真2のようなストレッチを行う必要があり、これは部活動中だけのストレッチでは時間的に不十分です。毎日時間の許す限り、行わければなりません。虫歯予防に歯磨きをする感覚で、スポーツ障害予防に毎日ストレッチを行う習慣をつけることをお勧め致します。
 ストレッチを行っていて痛みがあったり、うまくいかない時は整形外科医にご相談ください。

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