医療トピックス
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赤ちゃんのけいれんひきつけ
2013年12月
赤ちゃんのけいれんについてお話をします。育児に慣れるまでは、大切なお子さんがちょっとピクピクしただけでも、けいれんしているのではないかと心配になってしまう事もあるかと思います。正常な反応を示しているだけでも、一見すると、けいれんしているのではないかと思ってしまうようなことも、ずいぶんあります。
まずは正常な反応とされるもののなかで良く「けいれんではないか?」という相談が多いものを挙げてみましょう。
<けいれんのようでけいれんでない>
乳幼児の足や手がちょっとした刺激でピクピクすることがよくあります。これはけいれんと異なるものです。乳児期早期は神経の発達が未熟で、外からの刺激に対してピクッとけいれんの様な反応が出やすくなっています。しかし大人でも、先に挙げた例ほど極端ではなくとも、眠くなると首を前後にカクンカクンと船を漕いだり、ピクッとすることがあるのはみなさん経験されていると思います。当然、こどもも同様に眠いときに少々ピクッとすることはあります。これらは、けいれんとは異なります。正常ですから治療は不要です。
寒冷や発熱にともなう全身の震えもよくけいれんではないかと相談を受けますが、プルプル小刻みに震える様子で区別がつく事がほとんどです。ただし乳児で高熱に伴う大きな身震いを認めた場合には、重い尿路感染が隠れていることがありますので医療機関を受診しましょう。
生後6ヶ月から2歳くらいまでの乳幼児は身震い発作という大きな身震いをする事もあります。発作的に少し前屈み気味に体をかたくして手足を少し曲げた姿勢でワナワナします。症状がけいれんに似ていますが、顔色は紅潮することはあっても蒼白になったりはしません。一日に何回もくり返すこともありますが、一回の発作は10秒前後で終わります。ほとんどの場合年齢とともに自然に頻度が減り発作をおこさなくなることが知られており、特別な治療は不要です。
<よくあるけいれん>
大泣きしたり急にびっくりしたときに、息を吐いた状態のまま呼吸がとまり顔色が蒼白や紫色になって手足がガタガタ震えることがあります。これは憤怒けいれん(泣き入りひきつけ)といって、よく見かける症状です。けいれんそのものは1~2分でおさまり、顔色も戻ります。きっかけになるエピソードが特徴です。正常な反射にともなう症状ですので治療は不要で、後遺症を残す事もないとされています。
高熱にともなって、意識消失し顔面は蒼白、体を硬くして、時にはカクンカクンとリズミカルにけいれんを起こすことがあります。この発熱にともなうけいれんのほとんどは、日本人の8%前後が一度はおこすといわれる熱性けいれんです。多くの場合5分以内におさまり、良性で後遺症もないと考えられています。
乳幼児の胃腸炎、特にロタウイルスによる胃腸炎にともなって、けいれんをおこすことがあります。一度のけいれんは3分以内におさまり、2~3回でおわることがほとんどです。しかし、ときには数日の間にけいれんが群発することもあり、頻回にけいれんするときは入院治療を要することもあります。
<それでも、けいれんだと思ったらどうするか?>
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あわてない
ほとんどのけいれんは数分間で止まります。最初の数分で命にかかわる事はまれです。 -
刺激を与えない
口の中にものを入れない。大声で呼びかけたり、体をゆすったり抑えつけたりしてはいけません。 -
意識があるか確認する
急を要する可能性があるけいれんは意識消失を伴うものがほとんどです。意識がはっきりしているかを確認しましょう。 -
楽な姿勢で
体を横に寝かせ、服をゆるめましょう。 -
吐くと息がつまる
吐きそうな場合は、吐いたもので息がつまらないように体を横向きにしてあげましょう。 -
時間を確認しながらひたすら観察
おすすめはビデオや携帯端末での動画撮影です。撮影することで冷静さを取り戻しやすく、後に受診したときにも客観性の高い良い資料となり、よりよい診断の助けとなります。 -
とまらなかったらただちに受診
ほとんどのけいれんは3分以内におさまります。けいれんしているお子さんをお母さんご自身で病院まで連れて行くのは本当に困難です。顔色が極端に悪かったり重篤な症状でなければ、けいれんがおさまってからの移動が基本になります。ただし15分を超える発作は重積発作のあつかいになりますので、けいれんが5分を超える場合は救急車を呼んでただちに受診の準備をしましょう。 -
確認は必要
てんかんや心臓血管疾患などの基礎疾患を伴う場合もあります。たとえ予後の良いけいれんだと思っても、治療を要するかどうか見分けるために一度、医療機関を受診して確認することも大事です。
けいれんかな?と思ったときに一番お子さんの利益になるのは、お父さんお母さんができるだけ冷静さを保つことだと、ぜひ心にとどめておいてください。