医療トピックス
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過活動膀胱
2010年11月
「過活動膀胱(OAB:Over active Bladderの略称)」は最近テレビなどでも紹介されている病気です。
「漏れそうで、トイレに急いでいかなければ間に合わない」「排尿が間に合わず、漏れてしまった」このような症状で受診し、過活動膀胱と診断される患者さんが増えていらっしゃいます。
日本排尿機能学会が行った調査では、過活動膀胱の症状を持っている人は年齢とともに増え、日本の40歳以上の人口の12.4%に相当する810万人もいることが分かりました。
1.過活動膀胱(OAB)とは
「急におしっこがしたくなり漏れそうになる」、「おしっこをする回数が多い(一日8回以上、あるいは夜寝ている間にトイレに1回以上起きる)」、「トイレにいくまで我慢が出来ずに漏れてしまう」といった症状があるものを過活動膀胱と言います。
2.過活動膀胱(OAB)の原因は?
過活動膀胱は、排尿の仕組みにトラブルが生じて、膀胱の筋肉(排尿筋)が勝手に収縮してしまう(不随意収縮)ことが原因です。
これは加齢による膀胱機能の変化、脳出血や脳梗塞、パーキンソン病などの神経の病気、前立腺肥大症などのために膀胱が過敏になって、起こるものです。また原因が不明なことも少なくありません。
3.過活動膀胱(OAB)は生活の質を低下させます。
過活動膀胱の患者さんは頻尿や尿失禁を恐れて行動を制限したり、過剰に反応したりする傾向があります。こうした行動は、患者さんの生活の質(QOL:Quality of Life)の低下につながります。
仕事や家事がおろそかになったり、人との付き合いや外出がおっくうになったりすることは充実した人生にとって大きなマイナスです。
4.過活動膀胱(OAB)の治療
過活動膀胱の治療には、主に排尿のがまんや骨盤底筋の訓練を行う「行動療法」と、「薬物療法」があります。
まずは行動療法を実施して、症状を改善することが望ましいとされていますが、根気と時間を要することが多いため、薬物療法を併用して早期改善を目指します。症状の改善が見られない場合、おむつや尿とりパットの使用なども検討します。
【薬物療法】
1.抗コリン剤
アセチルコリンという神経伝達物質の働きを抑えることにより、膀胱の収縮を抑える薬です。頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁の症状以外に、尿が出にくい症状がある場合は、この薬を飲むと排尿困難が増悪することがありますので、排尿困難に対する治療も同時に行う必要があります。
2.平滑筋弛緩薬
カルシウム拮抗作用により膀胱の収縮を抑える作用のある薬です。膀胱の収縮を抑える作用は抗コリン薬より弱いとされています。
【行動療法】
行動療法には、排尿間隔を延長して膀胱の容量を増やす「膀胱訓練」や骨盤底筋の収縮力を高める「骨盤底筋体操」などがあります。
1.膀胱訓練
過活動膀胱の患者さんは、膀胱に尿が溜まっている時間が短く、膀胱にためることのできる尿の量も少なくなります。そこで、排尿をできるだけ我慢して、排尿の間隔を延ばし、膀胱が尿を十分にためられる状態にするための行動療法を膀胱訓練と呼びます。
2.骨盤底筋体操
骨盤の底(そこ)で膀胱や尿道、子宮や直腸などを支える骨盤底筋を鍛え、尿道を締める力を強くするための体操です。骨盤底筋を意識しながら、膣や肛門を繰り返し締めたり、緩めたりします。骨盤底筋体操は継続して行うことが大切です。
骨盤底筋体操によって、症状の改善がみられても、止めれば元に戻ってしまいます。生活習慣の一つとして、毎日欠かさず実行してみましょう
排尿に関して尿が間に合わないことが週に一度以上ある。また排尿で困るため、バス旅行などにいけないなどの方はかかりつけ医に御相談されることをお勧めします。