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大腸憩室

2018年5月

 大腸憩室は、以前は、欧米人では多くみられるが日本人には少ないとされていました。しかし近年では、食事の欧米化や高齢化に伴い、本邦でもその保有率が上昇してきています。

【大腸憩室】
 大腸憩室とは、大腸壁の一部が嚢状に外側に飛び出した状態で、大腸の内側から内視鏡でみると凹みとして観察されます。大腸憩室の保有率は欧米で高く、米国では60%に達します。本邦では、1970年代の保有率は5.5%でしたが、近年では増加し、2000年代には20%を超えています。また、大腸憩室の保有率は加齢とともに上昇し、高齢になるほど多発してきます。
 大腸の中での発生部位には人種間で差があり、欧米人では左側結腸(S状結腸、下行結腸)に多く、本邦では右側結腸(盲腸、上行結腸、横行結腸)に多くみられていました。しかしながら、近年ではわが国でも左側結腸型が次第に増加してきており、食事の欧米化の影響が考えられています。また、高齢になると右側結腸に加え、左側結腸にも憩室がみられるようになってきます。
 大腸の内腔の圧が上昇し、大腸壁の弱い部分が外に飛び出すのが主な成因とされています。食物繊維の摂取が減ると、糞便の量が減少し、糞便を送り出すために蠕動運動が亢進して大腸の内腔圧が高まります。近年の本邦の大腸憩室の増加は、食生活の欧米化による食物繊維摂取量の減少が主な原因と考えられています。
 大腸憩室を有していても大部分は無症状で、大半は大腸内視鏡検査や注腸造影検査で偶然に発見されます。無症状の憩室には特に治療の必要はありません。憩室炎や憩室出血などの合併症を起こした場合には治療が必要になりますが、本邦での頻度は高くはなく、5%程度です。

【大腸憩室出血】
 大腸憩室出血は、腹痛を伴わずに、突然の鮮やかな赤~暗赤色の血便で発症します。高齢者で抗血小板薬や抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)や消炎鎮痛薬(痛み止め)を投与されている場合に多くみられます。大腸壁を血管(動脈)が貫く部分に大腸憩室は好発するために出血は起こります。多くは自然止血しますが、輸血を必要とするほどの大量出血となる場合や再出血する場合もあります。治療としては、大腸内視鏡検査を行い、出血憩室が確認されたら内視鏡止血が行われます。内視鏡止血が困難な場合には、カテーテルを用いて出血血管を詰める治療や外科手術が必要になることもあります。

【大腸憩室炎】
 大腸憩室炎では、腹痛や発熱、嘔気・嘔吐などの症状がみられ、血液検査では炎症反応が亢進します。CTや腹部超音波検査で診断されます。症状や炎症反応が強い場合には、入院して絶食し、補液(点滴)を行い、抗菌薬を投与します。膿が溜まったり、穴が開いたり、腹膜炎をおこしたりした場合には、排膿のための管を留置したり、手術が必要になることもあります。

【慢性の症状】
 出血や憩室炎のほか、腹痛、腹部膨満感、下痢や便秘などの大腸運動に関わる症状がみられることがあります。普段から食物繊維および水分を十分に摂り、排便の習慣を整えることが大切です。適度な運動も大腸憩室による症状の軽減に有効とされています。整腸薬や便を軟らかくする薬などが用いられることもあります。

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