医療トピックス

区民の皆様にその時期にマッチした情報をお知らせします。

トピックス一覧へ

とびひ

2016年7月

 虫さされやあせもを掻きこわしたら次々と広がり、手が付けられない…。こんな経験はありませんか?それは「とびひ」です。
 「とびひ」の正式な名称は「伝染性膿痂疹」といいます。感染した細菌が周囲の皮膚にうつり、症状がどんどん広がる様子が、火事で火の粉が飛び火することと似ているため「とびひ」と呼ばれています。

 とびひの原因となる細菌は大きく分けて2種類あります。「黄色ブドウ球菌」と「溶血性連鎖球菌(溶レン菌)」です。
 黄色ブドウ球菌は、正常の皮膚や鼻の粘膜などにも存在している細菌(常在菌)ですが、キズなどから皮膚に入り込んで増殖するととびひを発症することがあります。ブドウ球菌によるとびひは、菌が増殖する際に産生する毒素で皮膚に水ぶくれを作るため、「水疱性膿痂疹」とも呼ばれています。この水疱は非常に薄く、破れやすいので、掻いて潰れると皮が剥けてただれた状態(びらん)となります。一方で破れた水疱内の細菌と毒素は周囲の小さなキズなどから侵入し、水疱やびらんを作りながら広がります。このタイプは乳幼児によく見られ、夏に多発する傾向がありますが、暖房の発達した現在では、年間を通じてみられます。

 溶レン菌によるとびひは、びらんの上に厚いかさぶたを作ることが多いことから「痂皮性膿痂疹」と呼ばれます。皮膚の症状以外にも発熱やリンパ腺の腫れなどの症状を伴うこともあり、痂皮性膿痂疹ではしばしば溶レン菌だけでなく黄色ブドウ球菌が同時に感染していることがあります。

 とびひにかかってしまったら、表面の細菌と毒素をシャワーでしっかり洗い流すことが大切です。症状の強い時には湯船に入ることは避けて下さい。また、プールも症状を悪化させますので、皮膚が完全に再生するまでは禁止です。適切な抗生物質を内服し、びらんやかさぶたに抗生物質の外用を行ないガーゼで被います。痒みのため掻きこわしてしまう場合には抗ヒスタミン剤などの痒み止めも有効です。治療をしっかり行っていれば、登園や登校は原則差し支えありませんが、皮疹の範囲が広く、広がる勢いの強い場合には、登園や登校を控えた方が良いときもありますので、かかりつけ医に相談しましょう。

 とびひの予防で最も大切なのは皮膚の清潔を保つことです。石鹸・ボディーソープを使用し、皮膚を傷つけないように丁寧に洗いましょう。皮膚のバリア機能が損なわれやすい乾燥肌やアトピー性皮膚炎の患者さんは、適切な保湿や皮膚炎の治療を行って、引っ掻き傷のような小さな傷を修復しておくことも大切です。皮膚を傷つけないよう、きれいに爪を切っておくことも忘れずに。また、鼻の中にはとびひの原因となる細菌がいるため、鼻をいじった手で体に触れるととびひになることがありますので注意しましょう。

 とびひはありふれた皮膚病ですが、黄色ブドウ球菌が産生した毒素が血液に入り込んで全身の皮膚に水疱ができ、ズルズルと剥けてしまう「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)」を発症したり、溶レン菌によるとびひの後に腎炎が続発することもあります。たかがとびひと甘く見ずに、しっかり治療して残り少ない夏を健やかに楽しみましょう。

訪問看護ステーション職員募集

「まちの保健室」各種測定&健康相談

新規開業案内

医療情報提供&逆紹介MAP

会員専用ページ

ページトップへ